2020年に東京オリンピックが行われますが、その中の競技の1つにゴルフが選ばれています。
ここでは東京オリンピックにおける、コーチの役割について経緯や必要性をまとめています。
日本代表の女子コーチの選定は難航を極めた
東京オリンピックは2020年に開催されることになっていますが、ゴルフ日本代表の男子コーチは丸山茂樹氏が、女子コーチは服部道子氏に決定しました。
実は男子コーチはリオオリンピックからの続投という事で丸山茂樹氏を早くから選出していたのですが、女子の日本代表コーチの選定は難航を極めました。
当初、オリンピック対策本部がある日本ゴルフ協会は、日本代表の女子コーチに宮里藍を第一候補として挙げていました。
しかし宮里はコーチ就任についての明言を避け続け、最終的にコーチに就任することを辞退することになります。
コーチ要請の件を辞退した理由について、宮里は「引退したばかりで自分にはコーチ経験が一切なかったため、まずはコーチについての勉強をしようと考えている矢先の要請だったため、コーチングの経験がない自分にはまだ荷が重すぎると判断したからです」と明かしています。
日本ゴルフ協会が宮里にコーチへ就任することを要請したのは2017年の7月なのですが、そこから1年近く、コーチが決まらないまま時間だけが過ぎていきました。
そして2018年の6月26日になってようやく服部道子に決定し、正式に就任することとなりました。
実は服部道子自身は宮里のように返事を先延ばしにしていたというわけではなく、要請を受けた翌日にはコーチ就任を受諾するという意志を伝えています。
コーチ就任の要請の話を聞いた際の経緯について、服部自身は「電話をもらったときは本当にびっくりして、自分で本当に良いのだろうかと、もう一度聞き返したくらいです。
1日お時間を頂いたうえでお返事をさせていただきました」と答えています。
ゴルフ日本代表コーチの役割はスポークスマン
しかし、ここで気になるワードが1つ出てきます。
女子代表コーチの要請を受けた際に、服部は要請の電話をした小林浩美会長から「コーチの役割はスポークスマン」だと伝えられたと答えています。
スポークスマンというのは、いわばゴルフ日本代表の事を世間の人に周知してもらったり、選手のサポートをする役割の人の事を指しています。
この話を聞けば、これはコーチとは呼ばないのではないだろうかという、素朴な疑問が浮かび上がってくるでしょう。
先ほど宮里藍は、自分はコーチの経験がまだ全然ないから日本代表のコーチの要請を断ったと解説しましたが、スポークスマンとしての働きを日本代表のコーチに求めているのであれば、宮里がコーチングの勉強をする必要はありません。
というより、女子プロゴルファーの中でも圧倒的な知名度を誇っている宮里藍であれば、うってつけの役割といえるのではないでしょうか。
実はこの日本代表コーチの役割がスポークスマンであるという事は、男子コーチである丸山茂樹氏自身も「広報として、選手から求められることがあれば即座に答えられるようにしたい」と明言しているほどです。
世間一般のコーチのイメージとしては、選手に対してより良い成績を出せるようアドバイスをし、メダル獲得に一歩でも近づけるようにサポートするのが役割ですが、どうやらゴルフ日本代表のコーチには指導面での役割はあまり求められていないようです。
しっかりとコーチングできるシステムになっていない
コーチという存在があまり必要がないというのは、競技内容や選手の選定方法が大きく関わっています。
まずオリンピックのゴルフではほかのスポーツのように団体戦で戦うというようなことはありません。
通常のツアーと同様に個人戦でメダルを狙いに行くという形をとっています。
もちろん選手たちに日本という国を背負っているという自負はあるでしょうが、ほかの競技よりも国同士でメダルを争うという意識はあまり持てず、あくまでも選手個人としての戦いという側面が強くなるでしょう。
しかも選手の選出はゴルフの世界ランキングによって選定されるシステムとなっています。
当然オリンピック代表を選出する期間も通常と同様にツアーは開催されており、実際に選手が選定されるのはオリンピックで競技が始まる1か月前となっています。
その間に当然順位は大きく変動することになるでしょう。
もしポイントが僅差の選手が居る場合は選定される直前に選手の順位が入れ替わるという事も当然あり得ます。
本番1か月前に選定された選手自身がオリンピックに向けて準備できることはほとんどないでしょう。
コーチに至っては選定された選手とコミュニケーションを築いていくのが精いっぱいで、コーチングできることなどあるはずもありません。
ゴルフ日本代表のコーチの役割がスポークスマンでしかないというのは、実はこういったシステム面での影響がとても大きいです。
世間一般のコーチとしての役割はほとんどできない
東京オリンピックのゴルフ競技に関しては選手の選定が実際の競技直前という事もあり、コーチ自身も選手自身も誰が出場するのか分かりません。
ですから選手に選定されてから実際に競技に参加するまでの準備期間がとても短いという事もあり、事前にできることというのはほとんどないでしょう。
したがってコーチも選手に対しては精神面でのサポートも、それほどできないというのが現状です。